お酒の解説 山廃造り(やまはいづくり) 2023/08/31
日本酒にまつわる用語をとりあげてご紹介していきます。日本酒に興味のある方、資格取得などに向けて勉強されている方の知識習得にもお役立ていただけるよう、できるだけ専門用語をつかわずカンタンな内容で解説していきたいと思います。みなさんも一緒に学んでいきましょう!
山廃造りとは?
山廃造りとは、天然の乳酸菌を取り込み、麹の力で米を溶かす、生酛造りの派生系の酒母製法です。
酒母造りは、大きく分けて速醸系と生酛系の2つに分けることができます。
人口の乳酸を添加するものが速醸系、空気中や蔵のなかにいる乳酸菌を取り込んで育成するものが生酛系です。山廃造りは天然の乳酸を育成する生酛系に属します。
生酛造りには、米を櫂で丹念にすりつぶす山卸し(やまおろし)という工程があります。
山廃造りは、この山卸作業を省略したものです。そのため山卸廃止=山廃と言われています。
生酛造りと山廃造りとの違い
先述したように、生酛では山卸があるのに対し、山廃では山卸を行いません。
つまり「米の溶かし方」に違いがあります。
生酛では、米を早く溶かすために、蒸米を粥状になるまですりつぶす必要がありました。
それが明治時代の産業革命以降、精米や製造の技術が進歩したことによって、麹の酵素の力だけでも米が十分に溶かせるようになりました。大変な作業を省略できるようになったのです。
1909年(明治42年)に、国立醸造試験所で山卸しを行った酒母と、行わなかった酒母に成分の違いがないかを調査する実験が行われ、特にないという結果を得られたことで、山廃造りは確立されました。
山廃造りは自然の力で作り上げるため、酒母完成まで30〜40日と長い時間を要します。
経験とセンスを要し、管理が難しく、途中で腐造するリスクも大きい製法です。
生酛造りと同様、速醸造りの開発によって省力化が進み、山廃造りを採用する酒蔵は減少しましたが、最近また増加の傾向がみられています。
山廃造りのお酒の味わい
生酛系に属する山廃造りは、生酛と同様に力強く、濃醇で飲みごたえのある味わいです。
その中でも山廃造りで造られたお酒は、酸味や苦味の効いた複雑な深みがある、頑丈でしっかりとした”ゴツい”味わいとなる傾向があります。
また味わいがしっかりとしているため、温めても風味が損なわれず、燗酒に向いていると言われています。
- 濃醇な深いコクがある、野生味のある力強い味わい
- 酸味や苦味の効いた”ゴツい”味わい
- しっかりとした味わいで、燗酒に向いている
まとめ・復習
- 山廃造りとは、生酛造りから山卸(やまおろし)を省略した酒母造りの手法
- 麹の酵素の力だけで米を溶かす
- 複雑な深みをもつ、ゴツい、骨太な味わい
酒母造りの工程やその他の手法について知りたい方は、ぜひこちらもご参考にしてくださいね。