お酒の解説 日本酒の製造工程を学ぼう – ⑩貯蔵 2023/07/05

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本シリーズでは、日本酒の製造工程ひとつひとつに焦点を当ててご紹介をしていきます。

本記事では「貯蔵」について詳しく解説します。

貯蔵とは?

貯蔵タンク

貯蔵とは、日本酒をタンクや瓶に入れた状態で寝かせ、熟成させる工程です。

生酒などの商品を除き、通常の日本酒は約半年から1年間、熟成させてから出荷されます。

熟成させることで、丸みがあり、まろやかでまとまりのある深い味わいとなります。

春先に絞ったお酒を秋まで貯蔵して出荷される日本酒を「ひやおろし」、3年以上貯蔵される日本酒を「古酒」と言います。

貯蔵の方法

貯蔵は、酒蔵にあるタンクのなかや、瓶に詰めて冷蔵庫で貯蔵するのが一般的です。

しかし、中には特殊な場所で貯蔵を行なっている酒蔵もあります。

ここでは、ちょっと変わったユニークな貯蔵方法をご紹介します。

雪室貯蔵

新潟県の八海醸造では、雪を有効利用して日本酒の貯蔵をしています。

冬の間に降り積もった1,000トンもの雪を貯雪室に貯蔵することで、貯蔵庫の空間全体を冷やす仕組み。

年間を通し、平均して約4℃前後に保つことができ、最大で36万リットルの酒を収容できる、まさに天然の冷蔵庫。

豪雪地帯の知恵を生かした、環境にやさしい貯蔵庫です。

八海山雪室(出典:八海醸造webサイト)

風穴貯蔵

長野県の戸塚酒造では、風穴を貯蔵庫として利用しています。

風穴とは、岩と岩の間から冷風が噴き出す穴のことで、昔から穀物の貯蔵庫や養蚕の蚕の卵の貯蔵に利用されていたそうです。

夏場でも約0℃〜1℃の低温に保たれる地面の底で、じっくりと熟成をしています。

小諸市にある氷風穴(写真提供:戸塚酒造)

海中貯蔵

宮城県の男山本店では、2006年から海中貯蔵をおこなっています。

瓶に詰めた日本酒を、牡蠣の養殖用の網カゴに入れ、海中に沈めて熟成させます。

海水温度は冬と夏で3℃から18℃程度にまで変化するものの、温度変化が緩やかなため、徐々に熟成が進み、波のほどよい揺れもおいしさに影響をしているのではないかと言われています。

宮城県気仙沼

トンネル貯蔵

秋田県の喜久水酒造では、旧奥羽本線「鶴形トンネル」の跡地を地下貯蔵庫として利用しています。

レンガ造りの全長約100メートル・約100坪のトンネルには、6万本の酒が収容できるそう。

1年を通じて約12℃の一定の温度を保つことができる、貯蔵に適した環境になっています。

この貯蔵庫は、2000年に国の登録有形文化財に指定されています。

旧奥羽本線鶴形トンネル跡地(写真提供:⼀般社団法⼈東北観光推進機構)

ダム貯蔵

富山県では、関西電力・富山県酒造組合・国土交通省・富山県・北陸電力の共同プロジェクト「とやま ダム熟成酒」が立ち上げられ、2020年から酒造15社が富山県内のダムに日本酒を熟成しています。

黒部ダムの施設内は年間を通して約10℃に保たれているそうです。

黒部ダムの横坑内に貯蔵されている日本酒(写真提供:関西電力株式会社)

バラエティーに富んださまざまな貯蔵方法をご紹介しましたが、いずれも、共通点として、光が届かない、低温で温度変化が少ない、という貯蔵に適したポイントを備えています。

紫外線や温度や湿度の変化に弱い日本酒にとって最適な環境を見つけて、有効に利用していることがわかりますね。

まとめ

本記事では、「貯蔵」について詳しくご紹介しました。

日本酒の旨味と深みを引き出すため、地元地域の特徴や施設を活用した、それぞれの工夫が見られる工程でした。

次回は「調合」についてご紹介いたします。