お酒の解説 日本酒の製造工程を学ぼう – ③蒸米 2023/06/26

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本シリーズでは、日本酒の製造工程ひとつひとつに焦点を当ててご紹介をしていきます。

「洗米・浸漬」で良い具合に米が吸水をして水切りを終えたら、次は蒸しの工程です。

本記事では、第3ステップとなる「蒸米」について詳しく解説します。

蒸米(むしまい、じょうまい)とは?

食用のご飯は、米を直接水にひたした状態で「炊」きますが、日本酒造りでは、水蒸気を利用して「蒸」す(むす・ふかす)方法で処理をします。

この工程を「蒸米」「蒸し(むし・ふかし)」「蒸きょう(じょうきょう)」と言います。

蒸すことで、米のなかに結晶状に詰まっているデンプンがほぐされて隙間ができ、米に粘りができます。それによって、後の工程で麹菌の繁殖しやすくなります。また、加熱による殺菌の意味合いもあります。

蒸米の工程

1. 蒸きょう(じょうきょう)

蒸きょうは米を蒸す工程です。蒸きょうに使う道具は酒蔵によって異なり、ひとつの酒蔵の中でも、造るお酒の種類によって使い分けている場合もあります。

甑(こしき)

甑による蒸米(写真提供:松岡醸造)

「甑(こしき)」とは、底面に穴の空いた大きな桶のような道具です。

甑のなかに米を入れて釜の上に乗せ、布で蓋をして蒸していきます。

後続の連続蒸米機と比べて必要な蒸気量が多く効率は悪いものの、昔から利用されてきた伝統的な手法です。

連続蒸米機

蒸米機による蒸米の様子(写真提供:隠岐酒造)

連続蒸米機とは蒸米用に作られた専用の機械であり、甑に比べ、大量の蒸米を少量の蒸気で効率的に処理することができます。

米をベルトコンベアに乗せ、蒸気層の中を移動させながら蒸す「横型連続蒸米機」と、円筒の上部から米を入れ、下部から蒸気を吹き込んで蒸し、 蒸米を自然落下させる「竪型連続蒸米機」があります。

2. 検蒸(けんじょう)

左:「ぶんじ」を使ってひねりもちを作っている様子 / 右:ひねりもち(写真提供:西海酒造)

蒸した後は、蒸し上がり状態の確認を行います。

この検査作業のことを「検蒸(けんじょう)」と言います。

蒸米を一握り取って押し潰し、ねって餅状にしながら、蒸米の硬さ、や弾力、伸び、手ざわりなどの感触だけでなく、香りや透明度など、五感を使って確認します。この際にできる餅状のものを「ひねりもち」と言います。

理想の蒸し上がり=外硬内軟(がいこうないなん)

日本酒造りでは「外硬内軟(がいこうないなん)」がよいとされています。外硬内軟とは、お米一粒一粒の表面は硬くパサパサとしていて、内側は柔らかい状態です。

外側まで柔らかいと、麹造りの段階で麹の菌が米の内側にまで入り込まないため良質な麹ができず、また仕込みの段階ですぐに米が溶けてしまいます。一方、内側まで硬いと芯が糖化・発酵しない可能性があります。

そのため、外硬内軟(がいこうないなん)の理想の蒸米を目指して、その日の天候や、蒸気の温度、圧力などを調整しながら作業を行います。

3. 放冷

放冷の様子(写真提供:隠岐酒造)

蒸米は、以降のさまざまな工程で利用するため、用途別に分けます。

一般的に、まずは「麹造り用」と「仕込み用(掛米)」の二つに分けます。掛米はさらに「酒母」「初添え」「仲添え」「留添え」の4つに区分され、それぞれ用途に応じた温度にまで冷まします。

放冷にも、蒸米を竹などで編んだ筵(むしろ)に広げて自然に冷ます自然放冷や、放冷機を使ってさます方法などの手法があります。

まとめ

本記事では、「蒸米」について詳しくご紹介しました。

繊細であると同時に、体力も必要とする力仕事であることが伝わってくる工程でした。

次回は「麹造り」についてご紹介いたします。