お酒の解説 日本酒の製造工程を学ぼう – ⑫瓶詰 2023/07/07

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本シリーズでは、前章を含め全13回に渡って、日本酒の製造工程についてご紹介してきました。

シリーズ最終回となる本記事では、最終工程「瓶詰」について詳しく解説します。

瓶詰とは?

瓶詰の様子(写真提供:西海酒造)

瓶詰とは、文字通り、日本酒を瓶などの容器へ充填する作業です。

最後まで徹底した品質管理のもと、厳しい検査を経て、製品として出荷するための準備を行います。

瓶詰の流れ

1. 洗瓶

まずは瓶を洗浄して瓶に付着した汚れをきれいに落とします。

瓶をゆすぐ水も日本酒の品質に影響を与えるため、仕込み水と同様に、厳しい成分の基準をクリアした良質な水を使用します。

2. 詰口作業(充填)

自動瓶詰機を使い、瓶の中に日本酒を充填していきます。

特殊な形の瓶を使う場合や、本数が少ない場合には、手作業で手詰めをする場合もあります。

3. 検瓶

瓶に日本酒を充填したら、日本酒が所定量入っているか、ひびわれがないか、異物が混入していないか、きちんと栓がされているかなどを目視で1本1本チェックを行います。

高性能な自動検査機を導入している酒蔵もあります。

4. ラベル貼り

無事検査をクリアしたボトルは、ラベルが貼られます。

ラベルは消費者が最初に見る、まさに「商品の顔」となるため、ゆがみや汚れ、糊の跡がないかなど、厳しいチェックと並行して行われます。

ラベルに記載されている「製造時期」は、基本的には、出荷用にラベルを貼り付けた時期を指しています。

5. 箱詰め

ラベルを貼り終えたら、透明フィルムを巻くなどし、ラベルが擦れたり結露で滲んだりするのを防ぐ保護を行います。そして、搬送用のP箱や段ボールに詰めて、ようやく出荷されます。

日本酒に採用されているさまざまな容器

日本酒の容器といえば瓶が多いですが、カップ瓶、紙パック、パウチパック、缶、ペットボトルなど、製造技術や保管・輸送技術の進化により、年々さまざまな容器が出てきています。

ここでは、日本酒に使われているいろいろな容器をご紹介したいと思います。

ボトル瓶は日本酒容器の定番。

日本酒瓶のサイズは日本独自で、一升瓶(1,800ml)、四合瓶(720ml)、300ml、一合瓶(180ml)がスタンダードな規格となっています。

かつては、日本酒は紫外線に当たると変質してしまうため、紫外線を遮断する効果の高い茶色や緑色の瓶が多く採用されていました。

現在では、店頭の管理状況が向上したことにより、透明や青色などデザイン性を意識して瓶の色を採用するケースも増えています。

カップ瓶

コンビニなどでよく見るカップ瓶。

一合(180ml)ほどの飲み切りサイズで、おちょこやグラスに移す必要なく、そのまま手軽に飲めるのが魅力です。

最近ではかわいらしいデザインのものも増えてきており、飲み終わったあとのカップをコレクションする方も多いようです。

紙パック

紙パックもコンビニやスーパーなど身近で見かけることが多い容器です。

軽くて保管や処分がしやすいこと、遮光性が高いことがメリットとして挙げられます。

紙パックの日本酒が登場した1960年代後半当初は、紙の匂い移りや液漏れなどの課題があったものの、現在では多層構造となり、容器別で見ると多くのシェアを占めています。

パウチパック

レトルト食品のようにプラスチックの袋に入れられたパウチパック。

軽くて持ち運びやすく、処分しやすいほか、そのまま凍らせてみぞれ酒を楽しむこともできます。

開栓後も空気に触れず、鮮度を保つことができる構造のものも出てきています。

生原酒 菊水ふなぐち スマートパウチ
生原酒 菊水ふなぐち スマートパウチ

1970年代からあるアルミ缶の日本酒ですが、しっかりしていながら割れる心配がなく、遮光性もあり、なおかつ、瓶と比べて軽量で輸送コストを抑えられるため、日本酒の輸出戦略として再注目されています。

また、リサイクルコストが瓶の約半分というメリットもあり、SDGsの観点からも再注目されています。

1合180mlサイズの缶入り日本酒ブランド『ICHI-GO-CAN®』
1合180mlサイズの缶入り日本酒ブランド『ICHI-GO-CAN®』(写真提供:Agnavi)

ペットボトル

最近たまに見かけるようになってきたペットボトルの日本酒。

もともとペットボトルは、瓶と比べて酸素や光を通しやすい素材であることから、日本酒には不向きとされていました。

しかし、酸素バリア性や遮光性を備えたものが登場したことで、日本酒容器として採用されることも増えており、こちらも軽量性や耐久性の面から、海外展開に期待が高まっています。

ボトル自体の形状加工もしやすいため、ボトルの表面に凹凸をつけるなどといったデザイン性を凝らすことができるのも魅力です。

上善水如 純米吟醸 ペットボトル

『上善水如 純米吟醸 ペットボトル』 ※販売終了商品(写真提供:白瀧酒造)

まとめ

さて、本シリーズでは、日本酒ができるまでの全工程を解説してきました。いかがでしたでしょうか。

私たちが普段飲んでいる日本酒がどのように造られているのか、造り方による日本酒の違い、そこにある造り手の想いやこだわりを知ることで、みなさんが自分好みのお酒を選べたり、より美味しく味わっていただける一助となれば幸いです。

今後も日本酒をもっと楽しむための知識を発信していきます。