お酒の解説 日本酒の製造工程を学ぼう – ⑦搾り 2023/07/03
本シリーズでは、日本酒の製造工程ひとつひとつに焦点を当ててご紹介をしていきます。
もろみの発酵が進んだら、いよいよもろみを絞って日本酒を抽出していきます。
本記事では、「搾り」について詳しく解説します。
搾り(しぼり)とは?
絞りとは、発酵を終えたもろみを搾り、日本酒(清酒)と酒粕に分離する作業です。
上槽(じょうそう)、または圧搾とも言います。
この際、あえて粗めの布で搾りを行えば、白濁した清酒に仕上がります。これが「にごり酒」です。
搾りを行わない、もろみそのままのお酒は「どぶろく(濁酒)」と言い、清酒ではなく「その他醸造酒」に分類されます。
搾りの種類
搾りにはいくつかの手法があります。ここでは代表的な手法として4つご紹介します。
ヤブタ式
自動圧搾機を使った手法です。
数十枚並べられた、板と布を合わせた袋状の部分にもろみを注入し、両側から横方向に圧力をかけて搾ります。清酒が搾られ、日本酒が酒粕だけが板に付着して残る仕組みです。
短時間で効率的に搾ることができ、自動化により手間も少ないため、全国の8割の酒蔵が使用している最も代表的な手法です。
「ヤブタ式」という名は、圧搾機の商品名「薮田式自動醪搾機」に由来しています。
槽搾り(ふなしぼり、ふねしぼり)
槽搾りは、槽(ふね)という細長く舟のような形をした器具に、もろみの入った酒袋を並べて積み重ね、蓋をして上から圧力をかけて搾る手法です。
昔ながらの手法であり、搾りの工程を「上槽」と呼ぶのはこれに由来しています。
袋吊り
もろみの入った酒袋を吊るし、圧力をかけずに、自然の重力だけで搾る手法です。雫しぼり、雫取りとも言います。
圧力をかけず自然に雫が垂れてくるのを待つため時間がかかります。
また完全に搾り切ることができず取れる量が限られるため、主に鑑評会出品用の日本酒や、高級酒を造る際に用いられる手法です。
遠心分離搾り
遠心分離機という機械にもろみを入れて高速回転させることで、遠心力によってお酒と酒粕を分離させる手法です。
他の方法と異なり「濾し布」を使用しないため、お酒に布の香りが付くことがなく、お酒本来の味わいを保つことができるというメリットがあります。
一度に搾れる量が少なく、澱下げや機械の洗浄などのメンテナンスも含め、非常に時間と手間がかかるそうです。
国内でも数蔵しか保有していない珍しい手法です。
搾り出される段階による名称の違い
搾りの工程においては、徐々に圧力を加えてお酒を搾り出していきますが、搾って出てきたタイミングによって、お酒の味わいが異なり、それぞれに名称がつけられています。
通常はすべての段階のお酒を混ぜて均一にしたお酒が一般的ですが、段階によって汲み分けて製品化する場合もあります。
あらばしり
最初に出てくるお酒を「あらばしり」と言います。
圧力をかける前に自然と滲み出てくる部分であり、少し白く濁っています。
香りがよくフレッシュな味わいです。
中取り、中汲み
あらばしり後、中段に出てくるお酒を「中取り」と言います。
適度な圧力をかけて搾り出される部分であり、透明でバランスが良くきれいな味わいです。
搾りのなかで最も品質の良い部分と言われています。
責め
最後に出てくるお酒を「責め」と言います。
中取り後、残ったもろみから高圧をかけて搾り出される部分です。
雑味が多く品質が劣るとも言われますが、濃醇で深みのある味わいとなります。
まとめ
本記事では、「搾り」について詳しくご紹介しました。
ようやく日本酒ができましたが、まだ私たちの手元に届くまでにはいくつかの工程があります。
次回は「濾過」についてご紹介いたします。