お酒の解説 日本酒の製造工程を学ぼう – ④麹造り 2023/06/27

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本シリーズでは、日本酒の製造工程ひとつひとつに焦点を当ててご紹介をしていきます。

本記事では「麹造り」について詳しく解説します。

麹造りとは?

麹米

蒸米の一部を使って、麹を造る工程です。製麹(せいきく)とも言います。

「麹(こうじ)」とは、蒸米に「麹菌」を付着させ、繁殖しやすい温度、湿度などの条件下で培養したものです。

日本酒造りの重要な工程を表す「一麹、二酛、三造り」という言葉があり、麹造りは日本酒造りで最も重要とされている工程です。

麹造りの工程

種切りの様子

麹造りでは、約2日間かけて以下の工程を行い、麹を完成させます。

1. 引き込み

麹造り用の蒸米を「麹室(こうじむろ)」と呼ばれる特別な部屋へ運び、広げていきます。麹室は、室温が30℃~40℃近くの高温多湿となっており、麹菌が繁殖しやすい環境が整えられています。

2. 種切り、床揉み(とこもみ)

蒸米に麹菌の胞子をふりかけ、米一粒一粒に胞子が均一に付くよう、混ぜていきます。全体が混ざったら、乾燥を防ぐため山積みにします。

3. 切り返し

山を切り崩して混ぜ、蒸米の温度・湿度を均一にします。

4. 盛り

麹蓋や麹箱といった小型の容器を使って、米を小分けにして盛ります。

こうすることで表面積を少なくし、層の内部に熱をこもらせて麹菌の繁殖を促進します。

また、ひとつの部屋のなかでも場所によって温度や湿度は若干異なるため、麹蓋を使って場所を細かく移動させることで、すべてのお米が均一になるよう調整します。

5. 仲仕事(なかしごと)

米を再度広げて水分を発散させ、麹に酸素を供給します。

6. 仕舞仕事(しまいしごと)

米をさらに広げることで、熱を逃します。

7. 出麹(でこうじ)

麹の完成を確認できたら、低温の場所で冷却し、麹菌の繁殖を止めます。

9. 枯らし

乾燥した場所に置いて、水分や麹の酵素分解力を調整します。

和食を支える麹

さて、冒頭で、「麹とは、蒸米に麹菌を付着させ培養したもの」と説明をしました。

しかし実は、麹は米をベースにした米麹だけではなく、他の穀物で培養する場合もあり、麦で培養すれば麦麹、豆で培養すれば豆麹になります。

こうしてさまざまな原料で作られる麹は、日本酒だけではなく、焼酎、泡盛といった他のお酒や、味噌や醤油、みりん、酢といった調味料の原料となります。

まさに、日本の食生活を支えている存在と言えますね。

麹菌のこと

麹菌はカビの一種で、でんぷんを糖に分解する「アミラーゼ」、たんぱく質を旨味成分であるアミノ酸に分解する「プロテアーゼ」など、たくさんの酵素を生成します。

麹菌のなかにも種類がありますが、日本酒造りでは「黄麹菌」という黄緑色の胞子をもつ麹菌が用いられます。

この黄麹菌(学名:アスペルギルス オリゼー)は、2006年に、日本醸造学会により日本の「国菌」として認定されています。

(左)電子顕微鏡で撮影した麹菌(写真提供:東京大学大学院農学生命科学研究科 醸造微生物学寄付講座 丸山潤一特任教授)

まとめ

本記事では、「麹造り」について詳しくご紹介しました。

麹造りは日本酒造りの最重要工程であり、温度や湿度といった環境管理がとても重要であることがわかりました。

次回は「酒母造り」についてご紹介いたします。